【暗夜嘉年華|百鬼夜行】【宮三】青い刃(10月9日更新三)【完結】
白組11号
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$ j9 t$ ?; f+ d& y* f, ]0 y2 [Special thanks to 飛筝さん!!
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`) O- {% ]6 Z" M/ Y$ F『青い刃 上』 原著∶gomafu 译文∶飞筝
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[三河一向一揆]:1563年、一向宗の本證寺を中心とした三河三箇寺(三河国の三つの大寺院)と反家康勢力が手を組み、領主の松平元康(後の徳川家康)と半年に渡り戦った、家康三大危機の一つ。一説によれば、この戦は本證寺に侵入した無法者をある城主が捕縛したことが発端であるという。
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ぴしゃぴしゃと水しぶきをあげながら、三井は山道を駆け下りていた。4 N) U0 ?+ E: k, W
夕餉の菜にと山菜を取りに出たのだが、アカザやカンゾウなどをいくらも取らぬうちに雨が降ってきた。幼い弟達の腹を満たすため多少の雨にくじけてはおられぬと、滑る斜面に足を取られながらも粘っていたのだが、いよいよ釣瓶をひっくり返したように雨が降り始め、斜面をすべりおちかけるわ、目はまともに開けられぬわで、これではとても仕事にならぬと山道を引き返してきたのだった。
9 {6 k; g/ ^* t0 Q1 ~, e) q 着物も帯もぐしょぐしょに濡れそぼち、落ちてきた雨をただ下へ通すだけの通路に成り果てている。視界が悪いため、落ちていた石に足を取られてまともに尻餅をついた。もう、これで何度目か!三井は腹立ちまぎれに右手にあたった小石を掴んで投げ捨てた。全く、こんなところに転がっていやがって、手に刺さって痛てえじゃねえか!micchi14.net- x- l( A* R. ~& g+ ]8 V2 \: e
カツン、と投げ捨てた石が硬い物に当る音がして、三井は音がした方向に目をやった。一面に丈の高い草が生い茂ったその下に、二つの岩が突き出している。岩と岩の間には幾重にも絡まり合った蔓草が渡り、その下に、人が入れる程度の空間が出来ている。奥行きはある程度以上はあるようで、雨雲と木々に天を覆われたほの暗い山中では、突き当たりは見えなかった。
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(この中なら、一時雨露を凌ぐことが出来るかもしれねえ)
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三井は立ち上がり、背負い籠を下ろして、ごそごそと岩の間の空間に入った。岩の高さは三井の腰よりやや高いという程度で、中へ入るには背や膝を折り曲げねばならなかった。& T) b& ]3 C$ u4 E
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「くっそ、狭めえなあ!」" k1 z+ r8 \6 }% A) w
「悪かったね」
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背中から岩の間にはいりつつ、思わずひとりごちた三井は、突然背後からした声に驚いた。振り返ると、穴の内部は意外に奥行きが広く、入り口以外は幾分天井も高くなっていた。その中に、一人の男が座っていて、ぎろりとこちらを睨んでいる。8 K: W/ W6 O2 C0 `6 F3 ~
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「ずぶ濡れで人んちに入ってきといて、随分な言い様だな」/ J+ ~+ ]3 T h# j( W
「え??ここ、お前んち?」
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再び驚いて周囲を見渡す三井に、男は険悪な目つきを更に悪くした。+ u+ m- X! Y' }* g5 x1 C
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「つくづく失礼な人だなあ。そっちが勝手に入ってきたんだろ?気に入らないなら出てけよ」
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三井は慌てて男に謝った。
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「ああ、すまねえ。こんなとこに家があるなんて思ってなかったからよ。ひでえ雨で参ってんだ。ちょいと、軒下を貸してくれよ」; o0 V( C1 w; {2 }2 o" N3 F D
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言い終えて、三井はくしゃみを二つして背中を襲った寒気に身震いをした。雨に体温を奪われたようだ。穴の奥の男が舌打ちをしたのが聞こえた。
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0 }1 ?$ e+ I% u3 E" b「しょうがねえなあ。中に入んなよ。今火をおこすからさ」
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口調から想像されるほど悪いやつではないようだ。三井は「悪いな」と言いながら、男の言葉に甘えて奥に入った。
, t) g% }7 \6 n) C6 U. e, C 熾された火を隔てて改めて見れば、男は彫りの深い顔にぐるぐると巻いた毛髪を持つ幾分小柄な青年で、年の頃は三井と変らぬようだった。男は三井の腰のものを見、次いでボロボロの烏帽子が頭に引っかかっているのを見ると、傍にあった布を被ってさっと顔を隠した。micchi14.net: @# [5 \8 N/ V( W% k
" A( d+ {1 i$ _$ d/ k% K# \9 \「あ・・・・・・あんた、お武家さんだったのかい」8 s4 x c- n n6 {( g" B1 B, }$ I
! a. S& @# B. [: r寿受主义——爱就是给他全部!三井は男の反応に驚いて、腰の刀と落ちかけた烏帽子に気がつくと、照れたように笑った。
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: W- Y; d* b7 H5 W4 |! b+ bmicchi14.net「あ・・・ああ、まあ・・・"元"ってとこかな。今じゃもう家も親もねえし、草鞋や馬草を売って暮らしてる。こいつは親父の形見なんで、未練たらしく持ち歩いてるだけだ。だからそうかしこまんなよ」
) J G O. Z' O寿受主义——爱就是给他全部!, d$ _" {! y/ S0 U1 C. u
男は小さく「そうかい?」と言うと、顔を覆っていた手を僅かに引き下げた。
3 a0 X* b4 M* J) q 三井は周囲を見回した。どうやらここは、山の斜面をくりぬいた洞穴のようで、奥には男の粗末な生活用品が置かれていた。いくつかの土器、冬場に被っていたのだろう鹿の毛皮、いくつかある籠の一つには刈り取った苧麻が挿されていて、立てかけられた木の枝には細く縒られた麻糸が巻きつけられていた。寿受主义——爱就是给他全部!, L% A4 R1 ?% q, W. M, {" K
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「お前、弦召そ(弓弦を作って売る賤民)か」
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) [7 f4 ~% C1 k$ _1 G5 u* G三井が聞くと、男は細い眉をゆがめた。1 j% A0 Y" e; \
; }+ O, U* j9 q9 m% Y. h `micchi14.net「ああ。まさかこんなところにお武家さんが来るなんて、思ってもみなかったもんで・・・・・・」% p5 m8 j+ o4 Z" t, e7 w% X
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三井は慌てて手を顔の前で振った。micchi14.net" @/ `% L( }7 L$ p7 L* O
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「いや、咎めてるわけじゃねえんだよ。ただ、神社もねえこんなところに弦召そなんて珍しいなと思っただけだ」
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男は布の中でくすりと笑ったようだった。
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「まあね。それこそ、訳ありのはぐれもんなんすよ」
3 C% u' R# p1 V- {( e" r% _「そっか。そんじゃあお互い、訳ありのはぐれもん同士、仲良くしようぜ」% i0 T3 z9 S+ ~: N/ y; z3 B
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三井は男に向かって「にっ」と歯を見せて笑った。男もようやく被っていた布を外した。( G$ x: L. y# x k
1 b3 }- R/ h `「アンタ、変ってんね」% C, ` [0 j1 C H
「そうか?自分じゃよくわかんねえけどな」
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% a' j5 V% }8 d) C$ C三井が首を傾げると、男は生意気そうな顔の口元を綻ばせた。笑う男は、存外に幼く見えた。3 X% F1 w, t, b* E/ y/ j X- s
突然、草木を叩いていた雨の音がさあっと止まった。三井が入り口に目をやると、徐々に濃くなってゆく茜の色が目を焼いた。三井は背負い籠の中を覗いて言った。
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0 p7 J& s( Y; b- l1 V9 H: lmicchi14.net「畜生。やっと上がったと思ったら、もうこんな刻限か。もう一度菜を採りに、山に入るわけにもいかねえなあ」
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頭を掻いてぼやく三井の前に、つい、と立派な瓜や豌豆の入った簀桶が差し出された。三井は驚いて、簀桶を差し出す男を見た。 n; W) m8 g$ [4 j2 P5 l
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「お武家さん、持っていきなよ。オレみたいなもんから施しを受けるのは嫌かもしんないけど、この山で採れたと思えば同じだろ?」 g# W" p& ~! n5 N- S3 Q, t4 j
「その、お武家さんって言うのはやめろよ。今は違うっつってんだろ。つうか、いいのかよ。こんなに貰って」
0 q& E& E; D9 D* w1 d2 x「いいよ。あんたの言った通り、こんなところに弦召そなんて珍しいからさ。それだけによく売れる。そこそこ実入りはあんのよ」
; q7 o( Y+ f& P「そ・・・・・・か。いや、有り難てえ。弟達が喜ぶぜ。この恩は必ず返すからよ」
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三井が軽く簀桶を掲げて頭を下げると、男は「んな、大げさだよ」とまた笑った。
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/ `. ~* V, G- N+ O9 x6 n1 s8 ]「俺は三井。三井寿ってんだ。ここの麓の吉良の町に住んでる」
" ~& s) T* M D, N「オレはリョータ。吉良の町には、たまに弦売りに行くよ」, M( E& g; U/ R: p( `2 O
6 b$ [7 M& o& H( o Y1 d三井は微笑んだ。寿受主义——爱就是给他全部!& E4 o# }, c1 ]2 Y- f& H
|5 z3 t7 G/ W S+ x B「そっか、なら、また会えるよな」
( E7 b( a$ i! ~4 D寿受主义——爱就是给他全部!「多分ね」
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三井は簀桶の中身を背負い籠に入れ、空の簀桶をリョータに手渡した。ずぶ濡れだった着物も、焚き火の熱でほぼ乾いている。三井はごそごそと穴の外へ出た。振り返ると、リョータも後について出てきていた。micchi14.net. V( O, \6 b5 J% z4 V
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「いろいろありがとな」) h9 F, S# n1 t* V: z" u
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三井が言うと、リョータは浅黒い肌を夕焼けに照らして、瞼に半ば隠した茶色がかった瞳で三井を見上げた。
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「うん。じゃあね」# _) C$ ]* E9 d1 g
. q" y' v9 ?' j, p0 g$ l/ |) i1 ~8 l三井は片手を挙げて、山を降りた。二人とも、なぜかこの時のお互いが胸に焼き付いて離れなかった。
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三井は、リョータと出逢った三ヶ根山を下りきったところにある吉良の町外れに住んでいた。板敷きがされているため辛うじて厩ではないと分かるような小さなボロ家で、戸板もところどころ磨り減って割れている有様だった。三井はここに、二人のまだ幼い弟と住んでいた。, M8 B" c U$ n* V
リョータに言った通り、五年前まではとある国の土豪に仕える武士の子だったが、今ではこの町で草鞋や馬草を商っている。しかし、こんな草だらけの山間の町で、馬草がそうそう売れるはずもなく、まして昨日今日覚えた者が編む不恰好な草鞋など売れるほうが稀で、自然、暮らし向きは苦しく、食べ盛りの二人の弟の胃袋を満たす物を求めて、日々奔走していた。
8 Q+ D1 q- z0 k% W n) V* R そんな暮らしをしているのに、何故まだ刀を差し烏帽子を被っているのかといえば、それが父親の形見だからでもあるが、弟達をいずれどうにかしてまともな職に就けてやりたいと思っているので、乞食に近いような暮らしをしつつも品格を落とさぬため、いわば見栄で身に着けているのだった。
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2 t3 [, P* P' c; Qmicchi14.net リョータと出逢って二週間が過ぎた。三井はこの間、全くこの町から出ていないのだが、リョータらしき姿はちらとも見かけなかった。「実入りはある」と言っていたが、弓弦を売らぬことには見入りも何もないだろう。だが、この町はリョータのいる山から最も近い町であるにも関わらず、弦を売る呼び声を聞くことはなかった。; w4 B% i) | u3 f, e
三井はといえば、リョータからもらった瓜や豌豆は疾うに食べつくしてしまい、三井が採った僅かな山菜もあっという間に尽きてしまった。日々、刈りに行っては売る馬草もなかなか売れず、最後にはただ同然で投げ売りしてしまうので、また食うに困る日々が続いていた。
. x& c1 N2 D( A% y さらには三日ばかり雨が降り続き、思うように馬草も刈りに出られなかった。米櫃の米すら尽きかけて、さてどうしようかと三井は考えあぐね、ひょっとしたらあのリョータは山の菜や魚を採って暮らしているから、弦を売らずとも食べるには困らないのではないだろうかと思った時、弟達の声が聞こえた。
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; m3 I% a" N7 D- j& n寿受主义——爱就是给他全部!「にいさま、おなかすいた」. ]- b9 K! f9 t5 H1 d3 B
「こら、富王丸。兄上を困らせるんじゃない」
& m& G/ @7 \3 ~8 t「う・・・・・・」
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0 w, Z: R g; ^- Q+ q# g寿受主义——爱就是给他全部!自らもすき腹を抱えているだろうに、弟を窘める次男と、それ以上の駄々をこねることのない末弟がいじらしく、三井は膝を叩いて立ち上がった。
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' }6 x5 v1 E$ o' [9 x) h2 Z「よし、兄ちゃんは今から山に行って山菜を採って来る。夕餉までにはたんまり採って戻るから、お前達、いい子にして待ってるんだぞ」
9 B+ A( ^' E9 P寿受主义——爱就是给他全部!「はい」micchi14.net. s: c0 ~7 o: D
「にいさま、塩もみの瓜がたべたい!」
e( V z7 Z+ q; w' o5 a* zmicchi14.net「ははは、瓜があるかどうかは分からないが、きっと、うまいもの沢山採ってくるからな」
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; o" u5 ]! ], d5 Y/ _: P1 A余程、リョータから貰った瓜がうまかったのだろう、期待に目を輝かせる弟達に手を振って、三井はまだ小雨の振る中、三ヶ根山へと入っていった。5 E: R# C; J+ `. F& S5 H/ Z, o: v
寿受主义——爱就是给他全部!! x, U/ T2 i4 E7 n
☆ ☆
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# K+ a |8 n; Y3 o/ B 穴の入り口でぷるぷると水を払う音がした。寝転がっていたリョータが目を開けると、洞穴の入り口からタヌキの瞳が一対、こちらを向いて光っていた。リョータは眠そうな目でしばらくタヌキを見つけていたが、やがて頭の下の指を組み直して溜息を吐いた。! o& g8 S3 l5 z/ J* a2 q! `
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「そっちは足場が悪いのに・・・・・・」寿受主义——爱就是给他全部!" A& M; F; \1 I3 i
+ E/ g( z ^# R4 U3 b* g寿受主义——爱就是给他全部!その言葉に同意するように、タヌキは入り口の軒下に座りなおし、心配そうに外を見つめた。
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☆ ☆寿受主义——爱就是给他全部!5 ?# H% W' m, |" M
, J: C8 t. W7 w' E7 \# | 三井は、前に来た時とは別の方角へ向かっていた。前回の時は見なかった細い獣道をかき分けて見たら、アカザやスベリヒユが群生していて、それをわしわしとむしり採りながら、山の奥へと向かっていたのだった。
+ I: m; b6 y6 x2 ^, E/ q ふと見ると、少し離れたところに大量の葛が生えていた。これは是非にも根を取っていこうと、三井はそちらへ歩み寄った。葛の近くに行くと、足元がぬかるんで、するすると滑りやすくなっていた。これでは踏ん張りが聞かないと思った三井は、右手にあった大き目の石の上に右足をかけて葛の根元を思い切り引っ張った。
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「うわああああああああ!!」" X5 z2 ]; t1 C) N. \) [/ U2 A
( ?; g! _+ g- Q( E8 O鬱蒼と茂った山の夏草に阻まれて全く見えなかったが、石の下には地面がなく、ちょっとした崖になっていた。足を踏み込んだ弾みで石が滑り落ち、三井の右足は宙に浮いた。慌てて左足を踏み込んだが水を多く含んだ土はするりと滑って、いびつに歪んだ形のまま、三井は一間半ほどの崖を転がり落ちた。寿受主义——爱就是给他全部!; B3 t6 b: B: i+ u) D
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「いっ、いてててててて・・・・・・」
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体のあちこちを擦りながら三井は起き上がった。落ちたはずみでその辺の物を掴んだらしく、腕には蔓草が幾重にも巻きつき、滑り落ちてきた崖は草が剥がれて泥土が剥き出しになっている。三井は溜息を吐きながら、腕に絡んだ草を払い落として斜面を見上げた。1 M: t, p1 [, j! }
上までの高さは一間半。足場は悪いが、長身で手足の長い三井ならなんとか上がれないこともないだろう。三井はとりあえず立ち上がろうとした。
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. B) n! _5 _5 g寿受主义——爱就是给他全部!「いいっっ!!」3 p) T0 B; v/ u
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足を踏みしめた途端、左の足首に激痛が走り、三井は再び倒れこんでしまった。どうやら変に捻れた形で落下したため、足を挫いてしまったようだ。三井は足首を押さえたまま途方に暮れた。micchi14.net) p2 t& s4 X: _& d: E* U
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「何やってんすかアンタは。まったく」3 W" f8 c: T3 u& P
+ F% z1 S; |8 C突然、崖の上から声が降ってきた。三井が驚いて見上げると、生意気そうな半開きの瞳が雨のなかでこちらを見下ろしていた。4 q# f$ s( ?2 D7 h
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「リョータ!お前なんでここに?」" X) a- t5 w, C7 S, r: J
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思わず三井がそういうと、リョータは眠そうな目の上の眉を歪めた。
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「そりゃこっちの台詞っすよ。まったく、なんで雨降ってんのに山に入ってくるかね。ちょっと待ってなよ」
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相変わらずぶつぶつと文句を垂ながらも世話を焼いてくれるようだ。三井は頬をほころばせて大人しく待っていた。しばらくすると、頑丈そうな蔦を編みこんだ綱が落ちてきた。! a6 g& u" }, G! m
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「そいつを腰にしっかり巻きつけな。縛り終わったらオレが引き上げるから」
& K7 i; D+ q6 }" w「わかった。すまねえな」
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" [4 b) J5 K8 T [! x2 u" q三井は十分な長さのある綱の端を腰に巻き、しっかりと縛った。
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「縛ったぜ」
& P: u( q3 m9 d( c7 a* _「じゃ、いくよ」
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! @ A/ q |: t% r# D: z( h: q: L寿受主义——爱就是给他全部!リョータは、うんうんと綱を引き、三井をどうにか崖の上まで引き上げた。
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「わりいな。また世話かけちまって」$ h* u" ^* l& t, t$ @7 X& K. O
「ホントだよ」( G. @, M% a: `/ V5 W' z4 g+ V
寿受主义——爱就是给他全部!/ [' A& A% Y4 z6 ]2 p W
リョータは荒い息を吐きながら悪態を吐いたが、三井の左足がはれ上がっているのを見ると、脇の森の中へ入っていき、程なく何やらを手に持って帰ってきた。見ればどこから取ってきたのか韮と生姜のようで、傍にあった木の枝と石でそれらをとんとんと潰すと三井が首に巻いていた手拭いを奪い取って塗りつけ、草履のとれた足に湿布を施した。
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* E1 l' _, D# }) z寿受主义——爱就是给他全部!「しばらくそこでじっとしてなよ。すこし腫れが引いたら送ってくからさ。さすがにアンタ背負って山を降りる自信は、オレにもないからね」
" e1 b% B% D" E$ ?# V( g2 dmicchi14.net「わりいな。ほんと」2 T9 m4 k4 o9 L- A" h; | ^ t
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三井は力なく言って溜息を吐いた。
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% R4 G: i; F4 M" T「あーあ。情けねえなあ。この何年か、弟達の親代わりにならなきゃと思って踏ん張ってきたけど、まともに稼ぐことさえ覚束ねえ。食うもんがなくて山に菜を摘みに入ればこのザマだ」* Y( K1 t5 z& c; L
. p$ Q! |1 d9 U5 F1 qリョータは綱を縛り付けていたクヌギの木にもたれながら聞いていたが、やがてだるそうに口を開いた。
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「それでも何年も兄弟の生活を支えてきたんでしょ。まともに稼げねえってこともないでしょうが」
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8 V" j% i2 G/ y& ^! r2 W寿受主义——爱就是给他全部!三井は苦く笑った。
1 q8 [& b/ x3 E, z寿受主义——爱就是给他全部!
4 t) ^+ ~6 |( n& w8 V8 d「今まではさ、実家から持ち出した金を工面しながらどうにかやってきたのさ。その金が尽きて、たちまち困窮してるってわけだ」
) u1 Q! e5 S- J/ c「ご実家へは戻らねえんすか?」
- h3 b4 |0 s4 r3 m, ~「言ったろ?もう家がねえんだよ。お取り潰しさ」
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リョータは少し驚いた。こんな素直にも程があるような明るい人物の一家で、家ごと取り潰されるような何が起こったのだろうか?/ Q# p/ q& v- q0 H- v" {
三井はリョータの見つめる前で、脇に置いていた刀を持ち上げ、鯉口を切って半尺ほど刀身を引き出した。
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# O9 J0 Z( H" q* F「ほんとにまあ、先祖どころか親にも合わせる顔がないぜ」
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0 y8 i% Y t7 \micchi14.net三井が見ている刀の刃先を、リョータは真剣に見つめていた。! n5 E. J. i! w( a
3 m2 @3 S4 E* O& ~「随分人を切ってるね、その刀。刀身にべっとりと血が巻いちまってる。そのままじゃ、もういくらも切れないでしょ」
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リョータの視線を遮るように、三井がぱちんと音を立てて鞘を閉じた。' s) r: o$ `& c9 G1 }3 B+ O& `9 [& Z8 D
; ~% p9 W8 r7 r! q! Y* D「おめえ、タダの弦召そじゃねえな」寿受主义——爱就是给他全部!2 ^: R' x5 X' L
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リョータは言われてはっとしたようだ。険しく細まった三井の目を見て、バツが悪そうに慌てて言った。7 O }! w& p* W- h5 M; e: `1 b! H
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「ああ、まあ、だからはぐれもんなんだって。でも、俺は刀を持ったことはないし、人を斬ったこともないよ。ほんとだよ」9 S" { j4 ~; s7 Y2 k
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三井は慌てるリョータを見て、なんだか気の毒になって眼光を緩めた。二度も助けて貰っておきながら、疑うのも失礼な話だし、なによりこの男が自分達に対して害意を持っているとは思えない。
1 A, _0 _+ G$ o% B リョータは三井が警戒を解いたのを見て取ったのか、立ち上がって言った。寿受主义——爱就是给他全部!' u: ?5 p6 c; ?0 l
) N% J, k& q. v1 r「そろそろ、送るよ。立てるかい?」micchi14.net: E! W4 w9 b: C7 ]0 q S
0 d2 T6 M. a: ]0 r三井は刀を支えに立ち上がり、下ろしていた背負い籠の中を覗いてがっくりと肩を落とした。たんまり採っていたはずのアカザやスベリヒユが、殆ど残っていない。崖に放り出されたときに、落ちたのだろう。8 L3 [6 m* i$ q
リョータの目が呆れたようにすぼまった。
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; s. K) m. j2 G9 o x, {; M( z「ホント、世話の焼ける人だなあ」
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, i0 Q! P) z/ x1 Dリョータは舌打ちをすると、また雑木林の中へ入っていった。そして程なく、韮や蕗、舞茸にイワナまでを一抱えも持って来た。/ E: V9 R' G) _6 q
そしてぽいぽいと三井の背負い籠に放り込み、自らが背負った。
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「どうしたんだよ!それ」
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目を丸くする三井に、リョータは片目を閉じて人差し指を口元に当てた。micchi14.net9 A, W; H# Z6 Q0 Z4 L% Z$ \0 n) ?
: t8 i% q" E- w5 G寿受主义——爱就是给他全部!「ま、それはオレの秘密っすよ」
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「それは」と言うが、どうにもリョータの周囲は秘密だらけのようだ。三井は呆れたように言った。
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「ほんと、不思議なヤツだなあ。お前」4 a) f0 m- E/ D6 w% C
4 n' u4 m. ?' C ]* e& ]リョータは笑うと、三井の左脇に体を入れて支えとなり、濡れた山道をすいすいと下って行った。
& w. }# z# m$ n* A- k+ n寿受主义——爱就是给他全部!寿受主义——爱就是给他全部!* D; R, w6 w1 Q) M' z% N
TBC
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0 |/ Y0 H0 d% C& ~本帖最后由 gomafu 于 2012-10-9 20:38 编辑